安藤政信初監督映画「さくら、」ロケ隊受け入れあれこれ…

藤橋 由希子

「さくら、」ポスター


Mirrorliar Films プロジェクト




誰でも映画が撮れる時代」を目指し、大手制作会社and picturesの伊藤主税さん、俳優の阿進之介さん、山田孝之さんらがスタートさせたこのプロジェクト。
若手とベテラン、メジャーとインディーズといったっ垣根を越えて、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなど総勢36名がそれぞれに監督した36本の短編映画を4シーズン(9本×4)に分けて公開します。
トップバッターとなる9作品が、シーズン1として9月17日より全国ロードショーとなります。

ジャパンプレミアがここ金沢で!



ジャパンプレミアでのひとコマ

このプロジェクトと金沢の関係はさかのぼること5年前。
山田孝之さんが金沢で偶然出会った一人の男性(普通の歯医者さん)との交流がきっかけ。まさかこんな顛末になろうとは!
「いつか金沢で映画を撮ってよ!」そんなフランク且つ冗談めいたやり取り。
その約束を果たすかのように、山田孝之さんは自身が主演する映画「さくら、」のロケ地に金沢を推薦したのでした。
そんなご縁をきっかけに、どんどん関係性が広がり、深まり、全国に先駆けての先行上映がここ金沢で行われたのでした。
それが2021年9月1日~5日の「Mirrorliar Films Kanazawa 2021」
当館は「さくら、」制作時のご縁から、開催実行委員会メンバーとしてサポートしました。

「さくら、」制作よもやま話


ジャパンプレミア終了後のオフショット


昨年(2020年)秋ごろだったでしょうか、先にご紹介した歯医者さんから突然連絡があり、このプロジェクトの話をお聞きし、協力の依頼を受けました。
当館は映画やドラマ、テレビ番組の撮影に協力したことは過去にもありまして、余談ですが、吉永小百合さん主演の映画「いのちの停車場」で、クライマックスシーンで現れた美しい朝日は当館で撮影されたシーンでした。
話しは戻って、今回はロケ地としての協力ではなく、基地としてのご相談。そう、撮影隊の受け入れでした。
世の中はコロナ禍真っ只中。感染対策をしながらの撮影はあらゆる面で困難が生じることは容易に想像がつきました。
歯医者さんの熱い思いに心動かされた私たちは、当館初となる、全館貸切という協力をお約束したのでした。
「さくら、」は、俳優の安藤政信さんの初監督作品で、安藤さんはロケ地選定のため何度も金沢を訪れ、そのたびに当館をご利用くださいました。

初めて宿にお越しいただいた時に、お部屋を一目見るなり「いいなぁ~!」と(≧▽≦)
ウッドデッキのずっとあれこれ考えていたいとか、お風呂で本を読みたいとか、あれこれイメージしたことを話され、「1週間くらい籠りたい!」とも(笑)。
そんなこんなで、ロケ隊の受け入れ&キャスト(出演者)の宿泊もまとめて当館で決定したのでした。
スタッフはと言えば、女子(年齢不問)からは終始黄色いコメントが(^^;)
「あの席に座って○○していた」とか、「○○なやりとりをした」とか、とにかく素敵な安藤さんに完全に撃ち抜かれており、メンズ(年齢不問)が不憫に思えたほどです。

受け入れやら感染対策やらハプニングやら


たまり場だった「きよ川」


打ち合わせや資材置き場になった「藍」


メイクや着替えなど支度部屋になった個室食事処

実際のロケは4月上旬。短編映画とはいえ、スタッフ、キャスト合わせて30名ほどになりますし、そこに現地サポーターも加わります。
映画の世界は監督の名前に「組」をつけるのが慣例だそうで、私たちは「安藤組」の一員となりました。
撮影期間中館内はさぞかし大忙しと思いきや、ロケに出てしまえば館内は静まり返ります。
連日早朝から夜、時には深夜まで続く撮影は、本当にタフで、こんな環境でも各自しっかり役割を果たせているのはやっぱり皆さん映画が好きなんだなぁとしみじみと感じました。
ロケ隊のお楽しみになっていたと思う食事はやはりケータリングが中心。
金沢の安藤組の手厚いフォローにより、ロケ弁は金沢のB級グルメやら、評判のレストランの特製やら本当に充実していました。
これも感染対策によるところが大きくて、皆さんあちこち出歩いてしまうと感染リスクが高まります。
オリンピックで言われた「バブル方式」を先行して実施したのが安藤組でした。
どこにも行けない代わりに、居ながらにして「金沢っておいしい!」を感じていただけたのではないでしょうか。



当館も早朝ロケの際は移動中やロケ地で簡単に食べられるようなお弁当も用意。
早い日は早朝(夜?)3時ごろには出発という日もあって、全て手作りのお弁当づくりは深夜からのスタートとなりました。
お部屋のお掃除は感染対策もあって、2-3日に1度のペース。
毎回驚くこともあって、小道具で使用する手作りの○○があまりにリアルで恐怖!
キャストの皆さんのの飾らない人柄もあって、たまり場になっていた1階レストランは、忙しい中にも穏やかな空気。
資材置き場に用意した宴会場は不思議アイテムがあったりと貸切ならではの風景がありました。

なんとロケ地にもなっちゃいました!

撮影前に沢山の視察をしてスポットを決めてきましたが、やはり時期が変わると変更も生じてしまい、予定した箇所での撮影ができないことも。
そんな場合の代案として、急遽館内ロケが実現!
偶然にもめでたく(?)クランクインと、クランクアップの撮影がどちらも当館ということになり、ちょっとしたセレモニーにも立ち会うことができました。
クランクインでは監督はじめスタッフの紹介と、挨拶が助監督の進行のもと行われるんですね。
ここで金沢安藤組メンバーも紹介していただきました。
そして息を殺した最初のシーンの現場を見学。
無言の背中が語っている・・・山田さんすごいです!
このシーンは実際の映画には登場しませんでしたが、宣伝ポスターに採用されていました。どれかは内緒!
そして、クランクアップはなんと客室を使ったシーンが!それも結構重要シーン!でもどこかは内緒!
やっぱりこういうところでは教えられないことが多いのですが、宿までお越しいただいた方(もちろん映画を見た方)にだけ、こっそり教えてあげることとしましょう!
安藤さんも、山田さんもとてつもなくかっこよくて自然体。
森川さんが衝撃が走るほど細くて顔が小さい!
テレビやスクリーン越しではわからない等身大のリアルな皆さんにいちいち反応してしまい、それを隠そうとすることが、だんだん楽しくさえ思えてきました。

ジャパンプレミア開催での再会とお別れ?




ジャパンプレミアの会場は、金沢21世紀美術館
映画はもちろん、最新技術のAIとプロジェクションマッピングの融合システムを体感できるコーナーも用意されました。
ここには200席弱のシアターがあって、映画館ではなく美術館で開催できたということに、制作会社の方は光栄だと感激されていました。
なんでも、映画というといろんなイベントは映画館で行われるのが当たり前で、それ仕様に自分達も準備しがちだけれど、美術館で実施できるということは、「映画は芸術」という評価判断をされた証と感じるそうです。
さらに21世紀美術館館長の挨拶が映像や映画という分野の価値をよく理解しておられる内容でグッときたそう。
このような場を用意できたことを誇らしく感じ、こういう懐の深い対応ができる金沢はいい街だなぁと思いました。
キャストの皆さんはトークショーの支度で大忙し、そこにつくスタッフも大忙し。それがまた面白い!

チェックアウトの日、朝食会場で制作会社の方と少しお話しする時間がありました。
映画の製作に関わる仕事は本当に大変で、時間も不規則。実際体を悪くする人も少なくないようですが、そういう激務に追われる方の言葉にハッとさせられました。
「おいしい」と思ってご飯を食べることができたと。
普段は時間に追われ、心に余裕がなく、コンビニのご飯を買い込んで、ごちゃまぜに口の中に詰め込むような食事をしていると言います。
そんな中当館での滞在中は、何を食べても「おいしい」と思えたそうで、本来食べることが大好きなのに、そんな感覚すら忘れてしまうほどの日常だったそうです。
よかった。当館で心穏やかにお過ごしいただけたこと、「おいしい」と思っていただけたこと。
私たちはそのために一生懸命やってきました。そして、宿の前を流れる犀川の穏やかな流れが一役も二役も買っていると思います。
ということで、締めくくりは「やっぱり由屋るる犀々っていいなぁ~」でした。
これにてMirrorliar Films season1にまつわるお話は終了です。
皆さん是非映画館へ足をお運びくださいね!


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